2018-2019の記録

2019年1月9日 投票結果を公表しました。

【投票の呼びかけ】

日本社会のジェンダー平等推進に関心をもつみなさまへ—ネット投票にご参加ください

 

【1】この企画の目的

 2018年も繰り返された、ジェンダーに関して問題のある公的発言(注1)や、企業の宣伝や広報。そして、大学入試における女性差別まで。日本社会において、人権についての基本的な理解が共有されていないことに深く失望した人も多いのではないかと思います。特に、そうした発言が政治家によって行われていることは深刻な問題です。また、こうした現状が放置されていることは、ジェンダー平等実現のための日本の取組が他の先進諸国にくらべて非常に遅れていることと深く繋がっていると、私たちは考えます(例えば、世界経済フォーラムによる2018年のジェンダーギャップ指数ランキングでは、日本は149カ国中110位でした。昨年より順位が上がっていますが、政治分野でも経済分野でも、順位は下がっており、サミット構成国であるG7の中で最下位(注2)であることも変わりません。G7の中で同性パートナーシップ制度がないのも相変わらず日本だけです)。

 

 だからこそ、1年を振り返る年末年始のこの時期に、今年も、政治家の発言に絞って投票を募り、皆さんの思いを可視化したいと思います。2018年の現役政治家および元職による公的発言の中から、私たちは、ジェンダーに関わる見過ごせない問題発言を、「ジェンダー差別発言にNO」「著しいジェンダー格差の容認発言にNO」という基準で選びました。この中から、みなさんの投票によりワースト発言を選ぶとともに、なぜこれらの発言がジェンダーにかかわる問題であるのかを、社会に向けて発信していきたいと思います。なお、いただいた情報は集計にのみ使用し、他の用途には決して使用しないことを、かたくお約束いたします。

 

 政治にかかわる人たちのジェンダー差別発言に対する批判や、そのような発言が繰り返される現状を変えたいという気持ちを示すためのこのアクションに、あなたもぜひご参加ください。

 

【2】ワースト発言候補とその理由

 私たちが選んだ今年のワースト発言候補と候補選出理由および関連する新聞報道・ウェブメディア記事へのリンクは、下記の通りです(肩書は当該発言当時)。投票においては、12個のワースト発言候補のなかから、最大2つを選ぶことができます。

 

1. 杉田水脈衆議院議員「待機児童、待機児童っていうけど 世の中に『待機児童』なんて一人もいない。子どもはみんなお母さんといたいもの。保育所なんか待ってない。待機してるのは預けたい親でしょ」

解説:

 2018年1月24日の自身のTwitterアカウントでの発言。保育所不足のため生じ、多くの世帯が困っている待機児童問題について、政策的に解決すべき課題との認識を示さず、子どもを預けようとする親(特に母親)へと問題の責任を転嫁した。

https://news.careerconnection.jp/?p=49122

 

2. 増井敬史安堵町議会議員(複数の女性国会議員に対して) 「両足を牛にくくりつけて、股裂きの刑にしてやりたい」

解説:

 2018年1月20日の自身のFacebookアカウントでの発言。特定の女性に対する憎悪感情を、その身体に対する暴力的処罰願望として公言した。

http://bunshun.jp/articles/-/6012

 

3.  麻生太郎財務大臣・衆議院議員「相手(被害を受けた女性記者)の声が出てこなければ、どうしようもない」「こちら側も言われている人の立場も考えないと。福田の人権はなしってわけですか」「そんな発言されて嫌なら、その場から去って帰ればいいだろ。財務省担当はみんな男にすればいい。触ってないならいいじゃないか」など、一連の発言。

解説:

 2018年4月12日に発覚した福田淳一財務事務次官による女性記者へのセクシュアルハラスメントについての、4月12日の自派閥「志公会」パーティー終了後および4月17日の記者会見での発言。セクシュアルハラスメントが疑われる事案において当然行うべき被害者に対する配慮に著しく欠けた財務省の対応を擁護するとともに、セクシュアルハラスメントの予防策として取材の場から女性を排除するという性差別を提案した。

http://bunshun.jp/articles/-/7134

 

4. 長尾たかし衆議院議員「セクハラはあってはなりません。こちらの方々は、少なくとも私にとって、セクハラとは縁遠い方々です。私は皆さんに、絶対セクハラは致しませんことを、宣言致します!」

解説:

 2018年4月20日の自らのTwitterアカウントでの発言。財務事務次官のセクシュアルハラスメントに「#Me Too」カードを掲げるなどして抗議する野党議員(多くは女性議員)の写真とともに公表された。「セクシュアルハラスメントを受けるのは、一定の特徴を持つ女性だけである」という誤った思い込みのもと、被害経験を訴えたりセクシュアルハラスメントに抗議したりしている人々を「自分にとって、セクシュアルハラスメントを受けるにふさわしくない人々」と位置づけ、揶揄の対象とした。

https://mainichi.jp/articles/20180423/k00/00m/040/091000c

 

5. 下村博文衆議院議員「確かに福田事務次官がとんでもない発言をしてるかもしれないけど、そんなの隠しとっておいて、テレビ局の人が週刊誌に売ること自体がはめられていますよ。ある意味犯罪だと思う」

解説:

 2018年4月22日の講演会での発言。政府官僚により繰り返されるセクシュアルハラスメントから自らを守るために被害者は録音を行った、という経緯を無視するとともに、政府官僚が加害発言をした事実を軽視し、被害者を犯罪者扱いして非難した。なお「売ること」と述べていることについては、4月19日のテレビ朝日の記者会見において週刊誌への音声提供に関し謝礼は全くなかったと公表されており、発言者の認識上の誤りもしくは事実の歪曲と思われる。

https://www.sankei.com/politics/news/180423/plt1804230036-n1.html

 

6. 加藤寛治衆議院議員(結婚披露宴に出席した際の呼び掛けとして)「必ず3人以上の子どもを産み育てていただきたい」(披露宴で若い女性に対し)「結婚しなければ子どもが生まれないから、ひとさまの子どもの税金で(運営される)老人ホームに行くことになる」

解説:

 2018年5月10日の細田派の会合で、自身が招かれる結婚披露宴での会話として紹介した。結婚や出産は個人の生き方やリプロダクティブ・ヘルス/ライツに関わることであり、他人に指図されることではない。個人の生き方の選択の自由という基本的人権を無視するような発言。また、女性の単身者のために税金が使われることを不当なことであるかように述べているが、これは、女性単身者も「ひとさまの子ども」同様、納税や無償・有償の労働を担い高齢者や社会を支えてきた存在であることを無視しなければ成り立たない主張であり、女性の社会への貢献を不当に低く評価している。

https://digital.asahi.com/articles/ASL5B5J93L5BUTFK024.html

 

7. 萩生田光一衆議院議員「0~3歳児の赤ちゃんに『パパとママ、どっちが好きか』と聞けば、どう考えたって『ママがいい』に決まっている。お母さんたちに負担がいくことを前提とした社会制度で底上げをしていかないと、『男女平等参画社会だ』『男も育児だ』とか言っても、子どもにとっては迷惑な話かもしれない」

解説:

 2018年5月27日の自民党宮崎県連の会合での講演中の発言。もし現在、子どもの愛着が母親に偏る傾向があるとすれば、それは第一には父親が育児に十分参画できないことの反映であろうに、「赤ちゃんは本質的に母親が好きで父親の育児は迷惑だと思っている」と主張し、男性の十分な育児参画の実現を阻むとともに、女性に育児が偏る現状を正当化した。

https://digital.asahi.com/articles/ASL5W4F1ZL5WTNAB00D.html

 

8. 二階俊博衆議院議員「この頃はね、『子どもを産まない方が幸せに送れるんじゃないか』と勝手なことを自分で考えてね」

解説:

 2018年6月26日の講演会での発言。自分が子どもを産むことについてどう考えるかは、女性(特に若い女性)の生き方やリプロダクティブ・ヘルス/ライツに関わることであり、他人に指図されたり、勝手呼ばわりされたりすることではない。個人の生き方の選択の自由という基本的人権を無視するような発言。

https://www.huffingtonpost.jp/2018/06/27/nikai_a_23468847/

 

9. 杉田水脈衆議院議員「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がないのです」「朝日新聞がLGBTを報道する意味があるのでしょうか。むしろ、冷静に批判してしかるべきではないのかと思います」などの一連の文章。

解説:

 『新潮45』2018年8月号に掲載された「 『LGBT』支援の度が過ぎる」中の文章。LGBTの権利を認め、彼らを支援する動きを報道するメディアへの批判や、一連の文章による主張を通じ、現在の日本社会が抱えるLGBT差別を容認したり、「生産=子ども」と単純化して性的指向による差別を助長したりした。また、LGBT差別解消のための政策的・社会的取組の必要性を否定した。

https://mainichi.jp/articles/20180722/k00/00m/040/028000c

 

10. 谷川とむ衆議院議員「同性婚や夫婦別姓といった多様性を認めないわけではないんですけど、それを別に法律化する必要はないと思っているんですね。趣味みたいなもので」

解説:

 2018年7月29日に放送された「Abema TV」の討論番組内での発言。「趣味みたいなもの」との認識を示すことで、選択的夫婦別姓制度や同性婚が法制化されていないため旧姓を使用できない既婚者(主に女性)や同性カップルが法的・社会的不利益や精神的苦痛をこうむっている問題を、政治家が軽視することを正当化した。また、性的少数者について「本人の意思や趣味・嗜好の問題」と捉える誤解の広まりが問題視されているなかで、このような誤った考えを公言した点も問題である。

https://digital.asahi.com/articles/ASL815FV3L81UTFK01C.html

 

11. 佐喜真淳元宜野湾市長(女性政策について問われ)「女性のパワーは年々上がっている。女性の質の向上、女性の地位やモチベーションが上がるような環境をつくっていくことが重要だ。」

解説:

 沖縄県知事選挙に向け2018年9月5日に開催された公開討論会で、司会から女性政策について問われた際の発言。沖縄が「女性の質の低さ」という問題を抱えているかのような認識を示し、女性が活躍できない第一の理由を、女性をとりまく社会にではなく、女性自身の資質に求めた。

https://ryukyushimpo.jp/movie/entry-797896.html

 

12. 平井伸治鳥取県知事「私たちの世代、男たちはメーテルに恋をしている。メーテルに頭をなでてもらう『鉄郎』になりたいと思っていたもので、いまの柔らかいお声に感激もした」「メーテルの名前の語源はギリシャ語で母。ぜひ母の慈愛の心を持って、大都市と地方の折り合える案を考えていただければ」

解説:

 2018年11月9日の全国知事会議での発言。大都市と地方の税収格差是正に反対する小池百合子東京都知事がハロウィンイベントでメーテルの仮装をしたことに言及しつつ、税収格差是正を受け入れるよう求めたもの。知事どうしの対話の場であるのに、発言内容ではなく声の女らしさに言及するなど、小池氏を「知事」としてではなく「男性の憧れの対象でありつつ男性を癒しもする女性という存在」として扱ったうえで、「母の慈愛」というジェンダー・ステレオタイプに則った行動をするよう要求した。

https://digital.asahi.com/articles/ASLCJ3TN4LCJUTIL00R.html

 

【3】結果の公表について

 皆さんの投票の結果は、2019年1月9日夜、FBページおよび本サイトで公表します。全体ワーストだけでなく、性別(性自認)ごとのワーストや、セクシュアルマイノリティ&アライの人々によるワーストも発表します。乞うご期待!

 

  【4】  投票ページへ

投票ページへはここをクリック!(終了しています)

 投票スタートは2018年12月29日0時00分

投票締め切りは、2019年1月6日23時59分です!

  

【脚注】

(注1)ここでいう「公的発言」とは、公職にある者または元公職者が、①それらの肩書のもと行った発言、②意見を公に表明するための方法を用いて行った発言、の少なくとも一方を満たすものを指します。
(注2)日本の110位に対し、フランス(12位)、ドイツ(14位)、イギリス(15位)、カナダ(16位)、アメリカ(51位)、イタリア(70位)。
(注3)「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」の日本語訳は「性と生殖に関する健康と権利」。1994年のカイロ会議(国際人口・開発会議)において国際的承認を得た、女性の妊娠・出産に関する自己決定権についての考え方である。

 

 

公的発言におけるジェンダー差別を許さない会(NOASEPS; NO to all sexist public speeches

 

呼びかけ人(五十音順)
申琪榮(お茶の水女子大学准教授)、千田有紀(武蔵大学教授)、中野麻美(弁護士)、西川有理子(パリテキャンペーン)、三浦まり(上智大学教授)、皆川満寿美(中央学院大学准教授)、村尾祐美子(東洋大学准教授)、柚木康子(公人による性差別をなくす会)