【2019-2020 ワースト発言インターネット投票結果】

 下記の8つの発言から、投票していただきました。一人最大2票とし、同じ発言に2票、2つの発言に1票ずつ、2票目を棄権、いずれも可能としました。

 【2019年ワースト発言候補】

①平沢勝栄衆議院議員「LGBTで同性婚で男と男、女と女の結婚。これは批判したら変なことになるからいいんですよ。もちろんいいんですよ。ただ、この人たちばっかりになったら国はつぶれちゃうんですよ」

 

麻生太郎財務大臣・衆議院議員「(日本人の平均寿命が延びたのは)いいことじゃないですか。素晴らしいことですよ。いかにも年寄りが悪いみたいなことを言っている変なのがいっぱいいるけど間違ってますよ。子供を産まなかったほうが問題なんだから」

 

桜田義孝衆議院議員「お子さんやお孫さんにぜひ、子どもを最低3人くらい産むようにお願いしてもらいたい」

 

増子輝彦参議院議員「ご覧の通り決して美人ではないが、非常にチャーミング」「見た目は優しい感じでチャーミングでしょう。美人ではないけど」

 

稲田朋美衆議院議員「自分と森さんの共通点は2人とも美人ということ」「森さんがいるだけで華やかだ」

 

三ツ矢憲生衆議院議員「この6年間で吉川有美は何をしてきたのか。一番大きな功績は子どもをつくったこと」

 

萩生田光一衆議院議員(女性現職候補の一番大きな功績は子どもをつくったことだとした三ツ矢憲生衆議院議員の街頭演説内容について)「母親になって一つ大きくなった候補を応援してほしいという趣旨だ」「聴衆からは一番拍手があった」

 

安倍晋三総理大臣・衆議院議員「お父さんも恋人を誘って、お母さんは昔の恋人を探し出して投票箱に足を運んで」

【2019年ワースト発言投票結果】

ランキング

 1位 麻生太郎副総理兼財務大臣・衆議院議員の発言  2588票(34.1%)

 2位 安倍晋三内閣総理大臣・衆議院議員の発言  1765票(23.2%)

 3位 平沢勝栄衆議院議員の発言  866票(11.4%)

 4位 三ツ矢憲生衆議院議員の発言 844票(11.1%)

 5位 桜田義孝衆議院議員の発言 599票(7.9%)

 6位 増子輝彦参議院議員の発言 355票(4.7%)

 7位 萩生田光一文部科学大臣・衆議院議員の発言 326票(4.3%)

 8位 稲田朋美衆議院議員の発言 250票(3.3%)

 

【投票者数】 3820人 前回(2026人)

 女性2228人、男性1422人、その他・わからない169人、性自認無回答1人

【投票総数】 7593票 前回(3933票)

 一人最大2票。同じ発言に2票、2つの発言に1票ずつ、2票目を棄権、いずれも可能。

【投票期間】 2019年12月30日19時00分〜2020年1月9日23時59分(約10日間)

【開票結果詳細】赤字はワースト1位

【図1 全投票の集計結果】

【図2 性自認による集計結果】

【図3 セクシュアルマイノリティ当事者かどうかによる集計】

【図4 性自認とセクシュアルマイノリティ当事者かどうかの組み合わせによる集計】

【主催者としての当会の解説】

 

・ワースト1位は政治家としての責任を直視せずリプロダクティブ・ヘルス/ライツを尊重しない麻生発言

 ワースト1位の発言は、麻生太郎財務大臣・衆議院議員によるものでした。2588票、投票総数の34.1%を集めました。全体計だけでなく、性自認やセクシュアルマイノリティ当事者かどうかなどの属性ごとの集計においても、ほとんどでワースト1位に選ばれました。

 他にもさまざまな問題発言があるなかで、特に麻生氏の発言に投票する理由として多くの方が自由記述であげていたのは、主に以下の4点です。第一に、麻生氏が現副総理、過去には総理大臣も務めた、政界で大変高い地位にある人物であり、その発言は非常に影響力が強いこと。第二に、長い政治的キャリアを持ち、国の政策決定を行う高い地位にありながら、国の政策の失敗原因を「子どもを産まなかった人」だけに押し付けるのは、政治家としての責任放棄だという意見。第三に、子どもを産む産まないは個人のリプロダクティブ・ヘルス/ライツに関わることであり、他人に指図されることでも「国のためになる/ならない」で評価されることでもないという趣旨の意見。第四は、過去に何度も問題発言を行って批判されているにもかかわらず、ふたたび麻生氏が問題発言をしたことに対する「反省がない」「国民の批判の声を聞く気もない」という怒りや失望です。このように、差別発言を繰り返し自浄能力もないように見える政治の世界の象徴として、麻生氏の発言がワースト投票の対象に選ばれた面もあるようです。

 

・2位は結婚・恋愛の性別によるダブルスタンダードを肯定した安倍発言

 2位は、安倍晋三総理大臣・衆議院議員によるものでした。1765票、投票総数の23.2%を占めました。

 安倍氏の発言に投票する理由として多くの方が自由記述であげていたのは、安倍氏が現職の総理大臣という大変高い地位にあり、その発言の影響力が非常に強いことです。国のトップが問題発言をすれば、他の議員や大臣からも問題発言が出やすくなるし、問題発言が生まれる政治風土の改善もすすまない、という趣旨の指摘もありました。また、既婚男性の婚外恋愛を前提とした安倍氏の発言に対しては、女性を軽視している、家族観が歪んでいるといった批判や、そのような問題ある価値観のもと国の政策が決定されていることへの失望や怒りを自由記述に書き込む方も多かったです。

 

・3位はLGBT批判の平沢発言

 

 3位は、平沢勝栄衆議院議員による発言でした。866票、投票総数の11.4%を獲得しました。同性愛者の増加への危機感を煽るこの発言に対しては、性自認を「その他・わからない」と答えた人や、セクシュアルマイノリティ当事者では、安倍発言を抑えてワースト2位となっており、これらの人々はこの発言に対してより厳しい態度を示しています。

 

・そのほかの順位、カテゴリーごとの集計結果について

 このほかの順位につきましては、上記の表および図にある通りです。

 カテゴリーごとの集計結果は、ジェンダー差別に反対する人々の問題意識がしばしば共通している一方で、人々の属性によって微妙な違いがあることを示しています。男性と女性では桜田発言や三ツ矢発言などリプロダクティブ・ヘルス/ライツに関わる発言への反応が違うようですし、セクシュアルマイノリティ当事者とそうでない人とでは、LGBT批判の平沢発言の順位がはっきり違います。性自認が「その他・わからない」と答えた人どうしでも、セクシュアルマイノリティ当事者と自認しているかどうかで平沢発言への評価に大きな差がありますし、セクシュアルマイノリティ当事者のなかでも、女性とそれ以外の性自認とでは、ワースト1位までもが異なっています(女性は麻生発言、それ以外の性自認では平沢発言)。

 このように、ジェンダー差別と一口に言っても、どのような発言をより深刻な問題ととらえるのかについては、属性によって違いがあります。ジェンダー平等を考えるにあたっては、多様な人々にとって「見えている景色」は多様である、という認識を前提とすることが大切ではないでしょうか。

 

 なお、自由記述欄に記入した747人中人(17.6%)が「全部ひどいのですべてに投票したい」「2票では足りない」という趣旨のコメントをしていることからわかるように、獲得票が少ないことは、その公的発言に問題がないことを意味しません。

【主催者としての当会のコメント】

 

・問題発言はまだまだ多い

 ワースト候補の数は、昨年の投票では12個でしたが、今年は8個に減りました。これが、公職にある人々がジェンダー差別的な公的発言をしないよう、以前よりも注意するようになったことの現れであるならば、望ましい方向への変化だと思います。でも、やはり、問題ある公的発言がまだまだ多すぎます。

 

・なぜ1位・2位の発言に投票が集中したのか

 今回の投票では、全体計では1位の麻生発言・2位の安倍発言に投票が集中し、3位以降を大きく引き離しました。これは、これらの発言が、現政権における「2トップ」(総理大臣と副総理)という高い地位にある人物のものであることが、大きく影響しているようです。高い地位にある両氏だからこそ、問題ある発言をしたことを一層強く反省してもらいたい、他の人の模範となる存在であってほしい、という投票者の気持ちが表れていると考えます。

 今回ワースト候補とした公的発言の多くは、聴衆として支持者が多く集まっている場で行われており、聴衆の受けを狙い、場を盛り上げるために行われたものと考えられます。自民党の発言マニュアルでも、そうした場での発言にこそ注意するべきと正しく指摘しているのですが、にもかかわらず、政権の中枢にいる政治家がそのことを理解できていません。日本の政治の根深い問題を象徴していると考えます。

 

・高い政治的地位にある人は問題発言を生む政治風土を変えるリーダーシップを

 私たちのワースト発言投票キャンペーンは今回で3回目ですが、ジェンダー差別的な公的発言として投票対象になるものの内容は、毎年かなり似通っていることがわかってきました。女性を「子どもを産む道具」のように見なしたり評価したりする発言、個人を性別に基づき特定の役割に押し込める発言、女性をその中身でなく外見で評価する発言、LGBTQが置かれた厳しい社会状況の改善を阻んだり偏見を煽ったりする発言などです。問題ある公的発言をなくしてゆくためには、そうした発言が出てくる政治風土も変えてゆく必要があると思います。高い政治的地位にある人には、リーダーシップを示し、現状を変えるアクションを起こしてほしいです。

 2020年には政治家による問題発言が一層減り、ジェンダー平等が前進することを願っています。

 

 

 今年も、問題のある発言が出てくる社会状況を変えたいという気持ちを示すために、たくさんの方が投票をしてくださいました。主催者として、心から感謝申し上げます。